[職人魂] 彼こそが鏝鍛冶。昭和を代表する名匠。 [藤本 好光(よしみつ)]

■2007年8月11日 藤本 好光氏は惜しまれつつ永眠されました。 よって当ページを永久保存版とさせて頂きます。
2007年8月11日 藤本氏は天国へと召されました。 鏝作りに捧げた彼の功績を讃え、当ページは永久保存版させて頂きます。
■藤本さんに私達若造が
言うのも何ですが、本当に
上手くなったよね。
特にベテランの域にある中、
更にステップUPされている
所が凄いよ!
使い込む価値がある。
それが藤本さんの鏝やね。
■藤本さんの鏝は大好きでね。
もう、これまで京都の2軒だけで
1,000万円ほど手に入れたね。
もう作ってないと聞いてたけど
無理をせず、これからも頑張って
欲しい。 使い始めは多少頑固
だけど馴染み始めたらこれほど
頼りになる鏝はない。 いざと
言う時の鏝やね。
■下記商品は氏がこれまでに製作した鏝を
コレクションとして所有している品々です。
残念ながら、ご購入頂くことは出来ません。
■段付面引鏝
※氏は多くの機械鏝を製作
している。 いずれも量産品
ではなく、技術試練のため
に製作している。
■ノンスリップ鏝Aタイプ
※高い精度と美しい仕上り
が絶品。
この様な鏝の製作は元来、
鏝鍛冶は手間の割りが合
わず好まない。
しかし氏はあえてチャレン
ジしている。
■ノンスリップ鏝Bタイプ
※これも左官職人の要望で
応えて製作した鏝。
丸棒を指定サイズで溶接し
成形している。
溶接も勿論、氏の手による。
■ノンスリップ鏝Cタイプ
※アール角度やラインの
本数等、要望は多種多様。
■京都茶室面引鏝
※京都のなじみ左官職人に
よるオーダー品。
製作には苦もなかったが
完成品には興味を抱いたと
言う。
■ツブ引鏝
※古くから手掛けてきた鏝。
それだけに細部の拘りには
氏の究極の技が取り込まれ
ている。 勿論首も手作り。
■サジ鏝色々
※当社のサジ鏝も氏の作品
。このコレクションが左官の
歴史を物語る。
■引きずり鏝
※漆喰のパターン付け用鏝。
鎚による打ち出し品。
型を使わない手間の掛かっ
た逸品。今後も、製作する
予定はない。
■ノンスリップ鏝Dタイプ
※削り出し工法により、完成
した鏝。 要望があっての製
作とは言え、ここまでやる
か。高い精度が伺える。
■人造鋼ダルマ鏝
※鎚一本での叩き出し。
これこそが人造鏝。
■本焼角鏝手カシメ仕上
※他の鏝鍛冶より、一早くに
角鏝を製作していた。もし
量産していたら凄いことに・・
■フチ焼鏝
※その名の通り、地金の
フチ部分に、のみ焼入れを
施した鏝。
中央は地金の状態。
■こなし鏝
※中央の厚みを生かすには
素材を痛めないこと・・・
見た目ではなく、実用目的の
こだわりは本物です。
■本焼四つ羽根面引
※プラスチック製ではない
本物の四つ羽根。
極薄の板材と四面には
4サイズの面が正確にある。
■人造元首四半鏝
※本鍛造品。四半鏝、本来
の形状こそがこれ。
首の取付けは勿論、カシメ。
■元首柳刃御多福型鏝
※細部の仕上りが美しい。
当時の左官職人による拘り
が伺える。
軽くアールが入る。
■本焼鋼黒磨砂切鏝
※やはり鍛造品。一枚の
鋼から打ち出し成形される。
肉厚のバランスが良い。
■波丸面通し鏝
※用途としては不明。やはり
オーダーによる品。
指定サイズに半丸を製作し
溶接・磨きで完成している。
溶接跡を見せないのも氏の
こだわり。
■煉瓦鏝
※これまで製作していたとは!
口金も自作品。鉄首も勿論
自作。形状も美しい。サイズは
3種類製作している。
■チリ際磨き鏝
※近年に要望があり製作した
鏝。鍛造の首は美しい仕上り。
それ以上に押さえ圧が正確に
伝わる逸品は正に神業。
■本鍛造玉鏝
首そして本体の仕上り等
生き生きとしている。
鍛造の魅力は使い込むことで
発揮される。
■人造柳刃切付鏝
※鍛造そして打出しによる品。
一切の溶接を使用していない
究極の完成度。
氏の拘りが伺える逸品。
■アリ鏝一寸
※本体・首の全てが一点もの。
通常サイズより手間の掛かる
鏝。実用品としては最小の鏝。
オーダーした職人の遊び心が
伺える。
■機械鏝(内角・外角)
※信じられないが全てが手
作業の逸品。 角度の変更も
可能。 実用性は別として
これも楽しんで作ったと言う。
■貴帳面鏡面仕上鏝
※独特の形状をに加え、
鏝中央ラインを鏡の様に
磨き上げ仕上げている。
■造園用叩き鏝
※左はオーダー品でとても
大きい。 右は通常品ながら
共に先端の形状に丸みがあ
る。もしや本来の形状も、
これが正しいのかも?
■水捏ね撫で鏝
※鍛造・ヒズミ取り・そして
焼入れ。 細部の工程に生
きる氏の技が遺憾なく発揮
された名品。
■鋼人造黒打柳刃鏝
※独特の形状は京仕上げ。
漆喰壁専用として左官職人
のオーダーとして製作され
た鏝。
■昭和初期、父 好春とその兄 好夫の両名によって藤本鏝製作所をスタートさせる。
当初は並鏝を中心に製作していたが、偶然で会った初期の西勘鏝に衝撃を覚え、
鏝鍛冶の可能性に目覚める。 戦火を乗り切った父 好春だったが病に冒され39歳と
言う若さでこの世を去ると、叔父にあたる好夫は まだ13歳だった好光(よしみつ)の
父親替わりとなり、好春がなせ得なかった名人鏝鍛冶としての厳しい修行をかせた。

中学卒業を期に、その取り組みは本格的となり、中首・押さえ・仕上鏝〜役物等を
手掛けて行った。 通常の鏝鍛冶なら、得意分野に留まるものを、非凡な彼はあえて
多方面にチャレンジ。 鍛造・焼入れ・溶接等… に優れた技術を発揮する。

四十を超えた頃から京都へ参入。 他の者を容易に受け入れようとしなった都の左官
職人は平然と無理難題を押し付けてくる。

「ヒズミの出ない波消鏝を作ってみろ。」 「1o単位で俺の好みに叶う鏝首を仕上て
みろ。」等々〜 気に入らなければ平気で返してくる。 京都の左官職人の厳しさは
並大抵ではなかった。  「生半可やったら、逃げていたやろえね。」 しかし、彼は
めげなかった。  何度も繰り返し、あらゆる技術を取り込むと、次第に状況に変化が
現れた。  オーダーの要望が増え始め、左官職人からは型紙が送られてくるなど
「お前は俺の専属や!」 「お前が作る鏝は全部俺が買う。」等、評価を集め始めた。

仕事に厳しいがホレたら一生・・・ 正に京都の魅力である。
京都の老舗名店[丸一]に加え、父が惚れ込んだ西勘からも依頼が入りると彼の鏝は
一般市場には出回らない、幻の鏝へと変わって行った。

受注に対し生産量が追いつかなくなっていたのだ。
それに大型機械の導入や、多人数を利用し分業することで、納得の行かない、製品が
市場に出回るのを激しく拒んだからである。

[私の鏝は惚れ込んでくれた人だけ、買ってくれれば良い。]
今も舞い込む、多くの要望に妥協の無い姿勢で取り組んでいる。
使い勝手の良さ。そして使い込む魅力。 双方を併せ持ってこそが鏝の魅力。
「今でも、あの当時の西勘は目標ですね。」 「鍛冶は所詮、自らの作品でしか、
職人に訴えることは出来ないのですよ。」 「使う者を唸らせる。」 「それが今も
目標ですね。」
★鏝鍛冶としてキャリア60年。 彼の目には今も妥協はない。


■父から息子に受け継がれた昭和初期、「西勘総本店」の鏝。

※左の筋入鏝は首を含む全が無垢材で作られている。 中首鏝はどれも火作りの
手打ち品。 首一本にもヤスリ掛けを施した丹精込めた逸品。最後の仕上も刃物研ぎ
が行われている。(藤本氏 解説) 当時の鏝鍛冶の凄さ、執念さえもを感じ取れる。


■@の鋼を3Kgの片手ハンマーを幾度と振り落としAの状態に打ち伸ばす。
中央の肉厚やヘリの加減をイメージしながら、途中何度もヒズミ取りを欠かさ
ないことも重要。 最後にヘリを切り落とし成形する。
金床での作業で丸一日を費やす。
現代では手打ちと機械打ちの併用が一般的。

■取材した、この日に火を焚くことは
なかったが、これが藤本氏が父の
代から所有する炉。

刃物鍛冶同様、コークスを鋳こし
焼入りを行う。 大きさは100X60
程度。 量産には向かないが「確かな
焼入れ温度を肌で感じ取れる。」と、
氏は語る。

現代ではこれらの工程は機械焼が
多用されている。

■氏は鉄首も自作する。 鍛造から素材を成形し、熱を加えて一気に曲げを加える。
更に鎚を打ち重ね完成させる。この製法で作る鉄首は抜けないし、緩まない。加えて
ミリ単位での高さ調整も可能だ。 いずれも手間の掛かる仕事である。



■藤本好光 今年で74歳を数える。
60年間、鏝一筋に生涯を懸けてきた。 鏝鍛冶からも頼りにされる程、その
器用さは折紙付き。 自らのブランドを持たず老舗店や有名ブランドを支えて
きた。 全てが手作り(火作り)で量産を好まない頑固な古き良き鏝鍛冶。

■2007年8月11日 藤本 好光 永眠する
■私と藤本氏の出会い。 それは昨日の
事の様に鮮明な記憶にある。。
私から出会いの約束を取り次ぎ、一時間程度
ならとお時間を頂きました。
私からの注文を受けて欲しい、それが私の
願いだったのですが、氏の工場を拝見すると、
そんなことが些細に思えるほど、そこは藤本
ワールドとも言える、まさに鏝のパラダイス
でした。そして二人で鏝の話が始まると
もう、時間なんて関係ありません。藤本さん
も時間を忘れたように一つ一つ丁寧に作品の
説明を下さりました。 
■更に自らの考えや鏝の歴史など、そこには生き生きとした藤本氏の笑顔がありました。
最後に「私にも鏝を仕上げて下さい。」 「何をどれだけ作るか。それはおまかせします。」
そしてノンスリップ鏝、両面黒打210oが誕生しました。
特に両面黒打鏝はサイト公開と当時に僅か半日で完売する大ヒットとなりました。
私は直ぐにそのことを藤本氏に伝えました。 藤本氏もそのことがとても嬉しかったようで
早速、次の225oへ取り掛かることを約束下さいました。 そして数日後、私も出張で
留守にするため、ご挨拶も兼ね連絡を取ってみると明日から検査入院に入ると言って
ました。 「わしも年だからな〜」 「熱い夏を前に藤本さんも無理しないで下さいね。」
「だが、あんたの仕事だけが気掛かりでな。 帰ったら一番に掛かるからな。」
それが私と藤本さんの最後の会話になりました。 帰宅後、何度がお電話をさせて頂き
ました。 その電話に誰も出ることはありませんでした。
藤本さん、安らかにお眠り下さい。 もっと早く、先生と出会えていたら、ただそれだけが
悔やめてなりません。                    8/12記 「職人魂」 木田まさひろ

■商品名:ノンスリップ鏝
サイズ:丈は120o
135度の面付き。Rサイズは
角(ピンカド)その他詳細は
下記図面をご参考下さい。
材質:本焼
参考価格:9,450円(込)

商品特徴:藤本 氏の丁寧な
仕事が際立った作品。
溶接箇所を一切、見せず
仕上げも美しい。寸法精度も
正確。 滑り止め施工に使用
する鏝。 この寸法は氏が
これまで取り掛かった同商品
で一番、注文が多かった寸法
を基準に製作している。

■現代の鏝鍛冶と一線を画く、彼の存在とは「いったい何んだろうか」
その問いを私は何度も自分に問いかけた。 結論はやはり、そこに京都と言う都が存在
していた。 彼らには独特の文化が存在している。 それは日本の伝統美だ。
藤本氏は語る、「私の作品を送り返して来た時があった。」 「あの時は本当に腹が立った。」
そんな厳しいやり取りの中で、藤本氏は間違いなく力を付けた。
彼にとって鏝は商品ではない。 値切られたり、使い捨てられたりするモノでもない。
彼にとって、鏝は作品でおり、使う者にとっても一生物でなければならない。
藤本氏との出会いが、彼の晩年であったことが、今でも惜しまれてならない。

■上記にて解説した通り、藤本氏による地金鏝の製作工程は途方も越える
経験と根気によって完成される。
幾度の指摘と改良を受けた、その完成品は名人久住氏が惚れ込み、愛用
されていることからも、その魅力が直感できる。
正真正銘100%手打ちによる地金鏝を作れるのは今や藤本氏ただ一人。
熱を加える事によって自然に浮き上がる黄金色は地金特有のもの。
人気のある
210oのみの数量限定(12丁のみ)販売です。
そして驚くべきはその低価格。 正に20年前の価格と言えるでしょう。
再販の予定はありません。 この機会に是非、本物の魅力を実感して下さい。

商品名:藤本作地金黒打鏝210o
サイズ:210o(先巾70o・元巾80o・総重量270g)

★完売しました。そしてこれが藤本氏最後の遺作となりました。
■地金の元材料。ぶ厚く、
切断すら容易ではない。
■手打ちの証しとも
言える鎚跡。
■更に熱を加えことで
美しい紋様が浮き上がる。
■藤本氏が地金黒打鏝を手掛けたのは今から40数年前に遡る。 鍛造の基本となる鎚の振り落としは地金本来の特性を生かすには絶妙のタイミングを
必要とし、完成品に至るまでには10年数年の歳月を要したと語る。  当初の地金鏝は材質の特性のみに利点を置き、作業時に於ける鏝としての取り
廻しの良さは二の次にされて来た。 しかし貪欲な名人達により更なる改良によって生まれたのが藤本流として今日の評価を生み出している。
ヘリの肉厚を更なる手打ちを加えることで極力薄く仕上ている。 そのため重量も軽い。首部分も補強を加え、充分な押さえにも耐えうる強度を確保した。
当初の違和感も短期間で馴染むのも藤本流地金ならでは。 漆喰にバツグンの威力を発揮する名品は20年来その形を変えることなく愛され続けている。

※昨今の地金鏝はベルトハンマーと手打を使い分けて製作されてます。 藤本氏による完全手打工法は修行時代の経験によって習得したものであり
現行他社品との相違や優越はおくまでもお客様の判断に委ねられます。 



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